
ふくろう文庫について
About a secret book
ふくろう文庫は、僕たちがオススメしたい本ばかりを集めた本棚です。一冊一冊に感想とオススメの理由を書きました。だからというわけではないのですが、題名や装釘は、なんと隠してしまいます。あら、ちょっとやりすぎでしょうか? でもね、本が好きで、本屋も好きで、普段から本を習慣的に読む人は別として、世界の大抵の人は、そもそも読書の習慣を持たないのじゃないかなって、僕は思うのです。そもそも本屋さんに来ない人もたくさんいるだろうし、世の中には楽しいことが多すぎるから。
くるしまぎれのヤケクソに、という訳じゃあないのですけれど。それでも、本はおもしろい。普段、本を読まない人に、本屋さんに来ない人に、どうすれば、この魅力を伝えることができるだろうか、と考えたら、ふくろう文庫になりました。どんな本か分からないかわりに、本の数は、これまで知っている本屋さんよりも、ずっと少ない。どうです? すごいでしょう?なんて、在庫量の少なさを自慢する店舗なんてナンセンスですね。でも、そもそも、「本が多すぎる!」っていう皮肉にも、そろそろ、僕らは気付いてもいいんじゃないかな。実はこれまで書かれた名作を読むだけでも、人生が七回も必要なくらいで、かくも世界は文字にあふれている。本の量が少なく思えるかもしれないけれど、安心してください。このお店の本を全部買い占めて、三日に一冊の調子で読んだとしても、全部読みおわるまでには十五年ちかくかかりますから。もしも、あなたが、無人島に流されることがあったならば、そのときこそ、この本棚のことを思い出してくださいね。すべてを知る必要はないし、どうせ、そんなことは不可能です。在庫量の少なさは、つまり、「選びやすい」っていうことかもしれませんよ?
ろんより証拠。どれでも、ふくろう文庫を手に取ってみてください。そこにはまず、本の通し番号が入っています。そしてその本の魅力を伝える文章もあるでしょう。数冊手に取ってみれば、きっと気になる推薦文が見つかるはず。この本棚を岩壁に見立ててクライムをはじめるなら、その本は最初に指をかけるための確かな隙間です。長年の読書人にとっては、自分が読む本を探すところから読書がはじまります。しかし、習慣的に読書をしないなら、次の本を探すことが、そもそもなじまないかもしれません。ふくろう文庫では、読みおわった後に、「次に読むならばオススメの本」を紹介しています。すべてのふくろう文庫は、読後のリンクが円環になり、時に分岐して、傾向やジャンルを跨いで、本が多すぎる世界から隔離された、小さな世界を作っています。ふくろう文庫は知らない本と出合うための本棚なのです。
うん、最後に、ふくろう文庫の由来を。版元が編集者が装釘家が、愛情を込めて作った本たちに、まず、ブックカバーが巻かれています。そして、不思議な書誌情報と推薦文が同封されて、最後に袋でとじてあります。ふくろとじ。ふくろうとじ。ふふふ。駄洒落ですよ。